ある日私は、眼を拾った。

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 しかし何故私の顔が見えているのだ? まるで人形ではなく鏡を持っているよう、だ……。  ふと、先程聞こえた少女の言葉が、脳裏に浮かぶ。 『--アタシが、アナタの眼になってアゲル』  アタシ……アタシって……まさか、この人形……? この人形の目が、私の目の代わりとなっているというのか……?  信じられん。信じられんが見えている以上、信じる他ない。  これは夢でも幻でもない。紛れも無い、現実だ……!  私は途端に人形が愛しくなり、ギュッと抱きしめた。  ありがとう……ありがとうよ……。私にもう一度、光を与えてくれて……。  きっとこの人形は、神様が使わせた天使の化身だ。  人形をまるで我が子のように優しく胸の位置で抱える。多少目線は低いが自分が見ている風景と何ら変わらない。  さあ、一緒に帰ろう。妻にもキミの事を紹介しようじゃないか。  私はしっかり前を見て、杖を着くことなく力強く右足を踏み出した。
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