地球も人間も、青かった。

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 戦争紛争、無差別テロ。公害被害に環境汚染。  テレビや新聞を見れば度々目にする言葉だが、いちサラリーマンの私にはいまいちピンと来ない。  確かに地球のどこかでは愚かな人間達が命を賭けて領土や政権を奪い合い、それだけじゃ飽き足らず、大気を汚染し、森林を伐採し、動植物を乱獲し、自然界にまで悪影響を与えているのだろうが、私は今こうして平和に生きている。  例えこの先、地球や人類の滅亡が約束されていたとしても、それは何万年か先の事。私は生きていた痕跡も誰の記憶からも消えていることだろう。  遠い未来の事など私にはどうしようもできない。私にはただ、目の前にある今を守る事だけで精一杯だ。  会社での地位。ローンを抱えた家。私には勿体ないよくできた妻。もうすぐ小学校に上がる息子。そして-- 「おうコラじじい! どこ見て歩いてんだええ!?」 「………………」  悪質な輩に因縁をつけられ、怯えて声を発する事もできない哀れな老人くらいだ。
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