不健全なキミと、健全なお付き合い

34/46
前へ
/46ページ
次へ
「ごめん、誰にも言わないから」 「いや、今のどういうこと?」 笹原くんが、私の手首を掴む。 いつの間にか一々抵抗するのも面倒臭くなってしまった、その行為がやけに気に障るのに、どんなに振り払おうとしても離してくれないのは、やっぱりいつもの通りだった。 「……橋口先生と付き合ってたよね?」 「……俺がっ!? なんで、そんなふうになるの? 橋口、妊娠して休職しちゃったじゃん」 そうなのだ。橋口先生は、今月から休職してしまった。まだ、お腹は小さかったけれど、体調がすこぶる悪いらしい。 だから、地学部にも顔を出さなかったのかな。お蔭で自由にしていられたから、私は助かったけれど。 それに、笹原くんが起きている時間には、きっと来ていたんだろうし。 「……旦那さんがいても、別の人と付き合う人もいるよ」 ボソリと私が告げたら、笹原くんはいやーな顔をして、ジトッと私を見下ろした。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

173人が本棚に入れています
本棚に追加