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「抱き合ってたって、どの程度?」
「は? 程度があるの?」
「だから、どんなふうにしてたんだよ?」
「こう……橋口先生が凭れかかる感じで……」
しどろもどろに首を傾げながら説明すると、笹原くんはハーッと大きな溜息をついて、しゃがみ込んだ。
ちなみに、手は拘束されたままだ。スツールに座った私の膝が、笹原くんの目のすぐ横にある。
さりげなくスツールを回して、そろりそろりと体を横に向けようとすると、グッと腕を引っ張られた。
「痛っ! だから、痛いってば!!」
「それ、あれだ。橋口が悪阻酷くて、眩暈起こしたから支えた」
「嘘」
「嘘ついてどうすんだよ。産休待てないほど具合悪かったの、知ってるだろ?」
それは、そうだけれども。まだ信じきれずに、私はツーンと横を向く。
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