不健全なキミと、健全なお付き合い

36/46
前へ
/46ページ
次へ
「抱き合ってたって、どの程度?」 「は? 程度があるの?」 「だから、どんなふうにしてたんだよ?」 「こう……橋口先生が凭れかかる感じで……」 しどろもどろに首を傾げながら説明すると、笹原くんはハーッと大きな溜息をついて、しゃがみ込んだ。 ちなみに、手は拘束されたままだ。スツールに座った私の膝が、笹原くんの目のすぐ横にある。 さりげなくスツールを回して、そろりそろりと体を横に向けようとすると、グッと腕を引っ張られた。 「痛っ! だから、痛いってば!!」 「それ、あれだ。橋口が悪阻酷くて、眩暈起こしたから支えた」 「嘘」 「嘘ついてどうすんだよ。産休待てないほど具合悪かったの、知ってるだろ?」 それは、そうだけれども。まだ信じきれずに、私はツーンと横を向く。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

173人が本棚に入れています
本棚に追加