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見上げる笹原くんはニヤニヤ笑いをどこかに引っ込めて、真面目な顔してた。それをぼうっと見てしまってから、ハッと事態に気付く。
ガタッと座っていたスツールを倒して立った私を、笹原くんはしゃがみ込んだまま、相変わらず握り締めたままだった手首を引っ張った。
これじゃ、おちおち逃げられもしない。
「そんなに警戒しなくても、奈留の嫌がることはしないよ」
「信用ならないようなことばっかり言ってるのが悪いんです!」
「でも、したことないだろ?」
「い、今のはっ!?」
「だって、奈留の許可を待ってたら、いつになるか。大丈夫。そのうち、奈留からおねだりするようになるから」
「なっ!! なりませんっ!!」
私は腕をブンブン振り回しながら、どうにかそっぽを向こうとする。
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