6人が本棚に入れています
本棚に追加
「『ぴー』じゃないです『シ』です」
「音階はどうだっていいんだ」
「わたしの配慮の気持ちです」
「いかがわしいことなんてしゃべってないよ。きみのおかあさんにぼくの電話番号を教えておいたほうがいいのかなって話だ」
「あはは」
「きみはどこから来たの?」
「えへへ」
「きみはなぜ飛ぼうとしていたの?」
「いひひ」
「ごまかすのがへたすぎる」
「……すみません」
「答えたくないならいいんだ。誰にも心配をかけていないならね」
「うふふ」
「ごまかしたいのはわかったから。詮索はしないよ」
「お気遣い感謝します。でしたら代わりにわたしが詮索しましょう」
「代わりになっていないんじゃないかな……」
ピイは私のぼやきを流して、思い返すそぶりを見せる。
「えーと、今日の朝を振り返って、おかしいことがあります。崖のへりに向かうわたしを見て、飛び降りるのかとキュウは勘違いした。ここまではいいんです。でも、わたしを止めるのがおかしいんです」
「ん?」
「だって、キュウは死ににきたんでしょう? 世界のことなんてもうどうでもよくて、わたしが死ぬことだってどうでもいいはずなのに、キュウはわたしを止めたんです」
「それは、止めるよ」
最初のコメントを投稿しよう!