6人が本棚に入れています
本棚に追加
ピイは胡乱なものを見るように眉根を寄せた。
「どうして」
さも、この疑問は誰もが抱くものだと言わんばかりの調子でそう口にした。私は戸惑いながらも答えを探す。ありふれた言葉しか浮かばなかった。
「自殺を考えるような歳には見えないし……」
「そうですね、たしかに自殺なんて考えたこともないです。ちょっと飛ぼうとしていただけですし。ついでにいうとですね、その言葉はそのままお返ししますよ」
「え……?」
「わたしからしても、キュウは自殺を考える歳には見えません」
「いやいや、ピイの三倍か四倍もの時間を生きているとね、いろいろと見えちゃってつらいんだよ」
「嘘ですね。ほんとうにつらくて死にたい人間は、こんなふうに会話なんてせずにひとりで死にます」
「あれ、ピイ、ぼくを追いつめにきているのかい」
ピイはやにわに。
「キュウはもう、ひとりではないんですよ」
常套句だ。常套句にすぎる。『生きていればいいことがある』というセリフと同じくらいの常套句だ。『アナタに何がわかる!?』と激昂してしかるべき薄っぺらいセリフだった。私は頭に来た。
最初のコメントを投稿しよう!