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「…………ほんとうに?」
けれど、そんなセリフしか出てこなかった。
「ほんとうですとも」
『貴方はひとりではない』というセリフは、私の顔すら知らない誰かが、私を含めた大多数に対して投げかける言葉だと思っていた。自意識が過剰なはずの私だが、耳にしたその手の文句を『私に向けて言っているんだ!』とはどうしても思えなかったのだ。
だから、私は自殺を選択しようとした。
ピイは、私を見ていた。私の顔を知っているピイが、私ひとりに対して、誰かが誰かに言うような言葉を口にしたのだ。もはや疑う余地はない。
私はひとりではないのだ。
感情を絞る音が聴こえてきそうなくらいの勢いで、涙が溢れ出した。
「泣かないで。もしかして、泣き虫なのですか?」
「ぜんぜん、違うよ」
「でも、ほら」
ピイは涙の粒を指先ですくう。しずくに濡れた指先を自分の唇に押しつけた。
「しょっぱい」
「だろうさ」
わずかに顔をしかめたピイを見て、私は笑った。
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