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私はカーテンを引いて用を足す。去ろうとする私にピイは提案する。
「ご一緒にいかがですか」
「まだ眠いんだ」
私の返事が不服なのか、うなっていたが、ふと私を釣るエサを思いついたのか上機嫌に告げる。
「わたしの水鉄砲はショットガンなのですよ! 喰らいほうだいですよ!」
水面から重ねた手を出している。
「失敗しているだけなんじゃないかな。おやすみ」
「そんな、まさか……! あ、おやすみなさい」
ユニットバスの戸を閉める。寝床に戻ろうとした私だが足がピイの着替えにひっかかった。
「あっと」
あわてて屈み、散らばった衣服を回収して畳む。その最中、これまで衣服に紛れて気づかなかった一冊のノートが出てきた。文庫本サイズの小さなノートだった。
『ゴク秘』と書かれている。
私はそれをひらいた。
「んん?」
適当に書いた切り取り線めいた、ぐちゃぐちゃの破線が何本も書かれていた。次のページも、その次のページも同様だった。
戸がひらく音がし熱気が漂ってくる。びしょびしょのピイがいた。私の手にあるものに気づき糾弾する。
「ああー! ゴク秘って書いてあるのにどうして読むんですか!?」
私は足もとのバスタオルを手渡しながら反駁する。
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