彼 女 の シ チ ュ ー

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「………………」  神父さまはそこまで読みきると、なんとも言えない表情をした。 「コメントしにくいな……『彼女のシチュー』の意味合いが違う」  そこで神父さまは、ふと思い立った。  ――何故、これを自分に?  人々の悩みや罪を聴き、神父さまは正しい道へと指し示す。それが仕事だ。  しかし、これは特異例すぎる。  奥方が亡くなったのは事故だとしても、旦那のやっていることは『死体損壊』という立派な『犯罪』に当たるのではないか。  万が一――ではない、百パーセントだ――神父が警察に知らせるという可能性を、考慮しなかったのか……。 「ん? 三枚目?」  二枚で終わったと思っていたはずの便箋が、三枚に分かれた。  そこにも坂内という男の雑な字が、一方的に神父さまに語りかけている。 『僕たちはまた新たな愛を誓い合うことに決めました。  つきましては、神父さまに是非その立会人になって欲しいのです。  残り少なくなった彼女のシチューに、僕は足しました。  二回目の二人の共同作業です。』 『どうかお願いです。  ふたりの愛の証として、僕と彼女のシチューを食べてくれませんか。』 『神父さまのおなかの中で、僕たちをひとつにしてください』。
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