おしいれ

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 でね。  それが。  どうもお経みたいな何かだってのが分かったんです。  まぁ、その時の私は小学校1年生で、それが本当にお経なのかなんて分からない。  今思い出しても、あれが本当にお経だったのか、なんて、ちょっと思うんですけど。  とりあえず、その時、それが何を言ってるのかも全然わからないし、とりあえずその声がお経っぽいって分かった。  で、その瞬間。  すごい怖くなってね。  こう、私だけかもしれませんが、お経なんて聞くと、一定のリズムで、割と静かな、眠くなるような感じを想像するものなんですけど、その時のそれはそんなもんじゃなくて。  何と言うか、恨みだとか、そう言う感じの、すごい怖いものが込められてる感じで。  うわぁ、て思った瞬間。  身体が金縛りになったんです。  もう、全然身体が動かない。  身体に力は入るんだけど、全然動ける気配がないんですよ。  何か抵抗感があって動かないとかじゃなくて、勝手に身体がぶるぶる震えちゃって、そんな感じでちっとも動かない。  そうしてる内にも、お経が段々、だんだん、近づいてくる。  もう、私もそれ聞いて、全身の血管が浮き出る感じで、心臓の音がすごい大きくなってしまって。  まっくらな場所で、分かるのがお経と自分の心臓の音だけで。  で、お経の声が本当に、すごい大きくなって。  近づいて、近づいて、近づいて来たんです。  私のすぐ後ろまで。
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