第1章

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「く、くひぃん、ひん、あ、あっ、あああー!」 「ふふ、可愛いな。天使がびしょ濡れだ。しかし駄目だろう。逝く時はイクと言いなさい」 「そんな……恥ずかしいこと言えるか」 「言いなさい」  彼女が真顔になり、俺を見る。 「…………わかったよ」  俺は彼女の顔をじっと見つめる。美しくて、胸がでかくて、肩に素晴らしく滑らかな筋肉が付いている。 「ひっ! あのっ! やり過ぎ……ああっ、イクッ!」 「本当に可愛いよ。愛しい私の弓月」  彼女は俺にちゅっとキスをした。  そして手の拘束を外してくれた。  あぁ、これが終わりの合図なんだって、俺は思った。  俺達の身分違いのワンナイトはこれで終わりなのだ。  ブラジャーを着ける。シャツを着て、靴下を履いて、パンツに足を通して。  俺はわざとゆっくりと着る。  もう彼女との関係が終わると思うと寂しかった。  彼女は私より先に着替えると、鞄から名刺を出した。 「ここがうちの住所。弓月。今夜おいで」 「え……」  百合の透かしが入っている名刺には、名前と六本木の住所と電話番号とメールアドレスが載っていた。 「坂居瞳……っていうんだ」  瞳は少し俯き、くすっと笑った。 「知らなかった?」 「ああ」 「そうか。私もまだまだだな」 「自惚れんな」  俺は瞳の名刺を名刺ケースに入れた。 「さぁ、パーティ会場に戻ろう。橘さんが心配している」 「そうだな。社長に何も言わずに来ちまったぜ」  俺達はまた幾つもある部屋を通って、エレベータに乗った。  夜景を見下ろしながら、熱いキスを交わして。
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