序章 僕がサラディニアに来た話

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僕の名前は、クラプトン・ビューレイ。 17歳になる学生だ。 大学への進学をきっかけに、一年間雪に覆われたサラディニアの街に足を踏み入れた。 真っ白な雪に覆われた白い壁と杏色の屋根の家々が立ち並び、白い壁に杏色と銀色の金色の鷲のレリーフが所々に並ぶサラディニア大学で、4年間を過ごした。 その4年間で、僕は勉強をして、恋をして、そして夢に敗れてサラディニアを去った。それから2年、僕は漸く夢を叶えてサラディニアに戻ってきた。何もかも無くして、本当に小さな、まやかしの希望だけを抱いて、僕は夢と希望と恋心に彩られた北の色彩豊かな街に舞い戻ってきた。 何もかも手遅れだと知っていた。エレノアはきっともう僕のものではない事も分かっていた。けれど、僕は戻ってきた。自分で自分を一度殺すために。そうして、もう一度生き返るために。傷ついて、そうして自ら傷を癒すために。 夢を追う中で、手のひらから零れ落ちていった大切なものを確かめるために。夢が食ってしまった色んな希望をもう一度確かめて、そうしてそれがもうない事を確かめて、そして、もう一度前へ進むために。 僕は、潰されてしまいそうなほどの思い出にあふれたサラディニアの街に戻ってきた。
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