空の下――序章

2/23
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
 図書室は静かで、時計の音さえよく響いた。 時計は16時半を指しているが、窓の外はもう薄暗い。 今日は元々 曇っていたから暮れるのが早かった。 なんとなく始めた読書に夢中になっている景は、 外の暗さにも気付いていない。 本の中の現実に引き込まれて、目を離せずにいた。  しかし不意に、景は顔を上げた。  図書室にいるのは自分と司書のおばさんだけ。 景はそう思っていたのだが、 いつの間にか人の気配が増えていた。 物音というより息遣い、気配を書架の方から感じた。 そちらを見やって、景はびくっと動きを止めた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!