標的

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バイトを終えて自宅へ。今日も疲れた。さっさと寝たい気分だぜ。 「はぁ……疲れた」 そう言って俺は自分の部屋の扉を開けた。中には必死にディスプレイを操作している蛍と、それを黙って見ているファルクスちゃんの姿が。やっぱり先に帰ってきてたみたいだ。 それにしても何してんだ? また『やりたいこと』でも検索してんのかな? 声を掛けようと思ったが、何やら必死そうだったので先に風呂に入ることにした。 風呂……。正直嫌いだ。いや、正確に言うと、入るまでの時間が苦手だ。入って身体を洗って湯船に浸かっちまえば幸せな気分になれるけど。バイトの疲れも吹き飛ぶってもんさ。さて……と、そろそろ上がるか。 風呂を終えて再び自室へ。入る前と状況が変わってない。タオルで髪の水分をゴシゴシと拭きながら二人を眺める。そして俺はバイト先で蛍のお土産を調達してきたことを思い出した。 「蛍、お前にあんパン貰ってきて……」 「うるさい、話し掛けないで頂戴」 「……っ」 言葉を遮られてしまった。氷のような目付き……いや、例えるなら『無』の目付き。色が無くて重い……そんな瞳をしていた。ビリビリとした空気が俺を支配した。 戦場で蛍と対峙した人間は、みんなこんな感じになるのだろうか。まるで蛇に睨まれた蛙の気分だ。動けないし、口も開けない。もし、何かをしようものなら、殺される……そう思ってしまった。
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