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「耐えろ!もうすぐだ!もうすぐ、封印はできあがる」
命を賭した注連縄であったが、それは本命への前置きでしかなかった。確実に逢魔をその場に留めておく為の。できることならば、注連縄だけで退治できればと淡い期待を寄せてはいたが、それも無理だったようだ。それほどまでに、この逢魔は強すぎするのだ。自分達にできることは、逢魔を封じるだけだ。
この地に。
----ブオオオオオオオオオ・・・オ?
逢魔は周囲を見渡して知る。自分が今いる川の周囲を取り囲むように、光り輝く柱が四本出現した。それは、本物の柱ではない。力を視覚的に捉えられるよう作られた細辻家の術式であった。
逢魔を取り囲む、四本の柱は見えない線で結ばれ逢魔を完全に閉じこめる形となった。さらに追い打ちをかけるように逢魔の足が浸かっていた川が光りだした。
----ブオ?オオオオオオオ!
がくっと、逢魔の身体が沈む。川底が急に消えたかのように。河岸に手を伸ばし、しがみつこうとするも引き込まれる力の方が強く、ズズズと逢魔が飲み込まれていく。全ては、柱を中心とし、逢魔を封じる強力な力によるものである。細辻家でも最大の力。それで封じることができなければ、絶望的だった。もう世界は、この逢魔によって蹂躙されるしかなかった。
----ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
逢魔の断末魔が大地を大きく揺さぶる。空も刺激され天候が荒れ出した。大粒の雨が降るも人々は動こうとはしなかった。逢魔が完全に川に封じられるまで、その成り行きを見守るしかない。
戦いによる赤く染まった川。それはいつしか、『朱月川』と呼ばれるようになり、今日も夕海町を北と南に分けるように横断していた。
細辻家の本家ともいうべき、夕海神社は今でも朱月川を見下ろせる場所にあった。夕海町の町長である、細辻メイは毎朝、出勤する前に実家から朱月川を見下ろすことが日課となっていた。今日も平穏無事な川に安堵して。
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