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今まで優香は探偵紛いの行動で人捜しをしたことは何回かある。もちろん、オカルトが関わっていると思われたから、その人を捜していた。しかし、まさか、オカルトクラブとしての最初の活動が、幽霊の捜索など誰が想像できただろうか。これには、優香自身も驚かされた。それが、教師からの依頼となれば、尚のこと、驚きに値する。
「人捜しみたいなことをしたことはありますが、幽霊を捜すのですか」
「もちろん、本気にしなくてもいいわ。もし、見かけて話でも聞けたら、聞いてほしいことがあるの」
矢子は捜して欲しいという幽霊の生前の写真を優香に渡した。幽霊なので、この特徴、その全てが当てはまるとは限らない。
「この人は誰なのですか?」
「小々路英鈴(こころ えいりん)。私の養父よ」
辻努は放課後、二階の図書室に訪れていた。努は受付の背もたれのある回転椅子に腰をどっしりと乗せ本を読んでいた自分と同じ二年生で図書委員である野零寺蜂吏(のれいじ ふさと)に夕海町の地図をA4紙にコピーしてもらった。家に帰ってからでも良かったのだが、どうしても、早急に確かめたいと思い、地図のコピーに線を引いていた。
(だいたい、これぐらいか。規制線の範囲は)
チラシやお知らせ版に掲載されていた大夕海祭の折、閉鎖される場所を実際に確認していた。前回の大夕海祭の時、自分はまだ生まれてもいなかったので手に入っている情報で確認するしかない。
細辻家からも情報はもらっていたはいたが、二十数年の間、バブルもあっても都市開発が大幅に進んでしまったのもあって、正確な位置をもう一度、洗い直さなければならない。なにせ、時間が残されていないから。
三時限目が終わる頃、船の汽笛のような音が夕海町に轟いた。その音は停滞気味だった授業を受けている最中、眠気に襲われてた努の目を覚醒させるには十分すぎた。
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