その3

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 行くのは億劫であったが、呼び出しを無視する訳にはいかない。学校に居る間、自分は一生徒なのだから。  生徒指導室は図書室から階段を下りれば、すぐの場所にある。  長テーブルに広げていた本や資料を閉じると、元あった棚に返して努は図書室を出た。  努は自分を呼び出した相手のこは大体の検討はついていた。いったい、何の用で自分を呼び出したのか。努は白いパテで簡単に修復されただけの床や壁、天井をチラリと見た。新校舎だというのにもう亀裂が入ったのかと、用務員の人がぼやいていたのを覚えている。口にはしなかったが、そこを傷付けたのは輝葉だ。彼が逢魔の狭間で刀剣を突き刺したから、現世の校舎に亀裂のような痕が残された。  校舎を傷付けたことは輝葉も責任に感じたらしく、逢魔の戦いで傷がついたと嘘の報告を政府にし近々、亀裂は修繕される予定であった。もちろん、極秘にだ。  努は傷跡を見て深い溜め息をつくと生徒指導室の引き戸をノックした。 「辻努です」 「入れ」  先に生徒指導室に来ていた辻利輝葉の声だ。やはり、努を呼び出したのは輝葉であった。呼び出したのが、彼ということになると努はますます、警戒せずにはいられなかった。前のこともある、和解したとはいえ、十分な警戒が必要だ。 「失礼します」  努は引き戸を開けたが、すぐには入らなかった。注意して手を伸ばしてみた。手が少し生徒指導室に入るとどうだろうか。指先から、スッと消えたではないか。すぐに、手を引き戻した努は注意深く、廊下と生徒指導室の境目を見た。  優香が消えた時は気付かなかったが、空間に薄く筋のようなものあった。そこが、丁度、切れ目のようになっており手を通すと、現世とは別の場所、逢魔の狭間に通じているようだ。生徒指導室など、利用する者は殆どいなく空き教室であることが多い。それを、輝葉は知っていたから、ここに逢魔の狭間に通じる裂け目を生み出したのだろう。  努は裂け目に不信感を懐きつつも、そこ意外に通れそうな場所がないので仕方なく、そこを通って生徒指導室に入る。
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