その3

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「王魔は世界中にいる。もちろん、中には人間に協力的な王魔も存在している」 「人間に協力的?」 「そうだ。逢魔の弱点を教えてくれる王魔、努も聞いたことがあるだろう。アンサーの噂」  アンサー。努も一度は、噂で聞いたことがある。電話を使った話で、AはBに電話を。BはCに電話を。CはDに電話と、最後はAにと同時に電話を掛けるものだ。丁度、電話でグルリと円を描くように。本来なら、相手は話し中なので電話が通じることはない。だが、希に繋がることがある。それこそが、アンサーと呼ばれる謎の存在である。彼は、どんな質問にも必ず答えを出してくれる。誰かの秘密はもちろん、いつどこで、何をしているのか。将来、どんな人と結婚するのか。答えられない質問は絶対にない。ただし、一つだけ、聞いてはいけないことがある。それは、自分の寿命についてだけ。それをアンサーに質問することは、自らの命を差し出してもいいということ。それは、即ち死を意味する。 「アンサーは確認されている王魔の一人。彼は物事に答えるのが好きな逢魔で、逢魔に取り込まれても自我を保ち続けた。ルールさえ、破らなければ危険性のない逢魔として各国の要人として雇われている」 「逢魔を雇う。そういうのアリなのですか・」 「危険性がなければ、手元に置いておきたい。それはいつの時代も同じだ。原発だって危険ではないからと、国が率先して原発を造っているだろう。それと同じだ」 「なるほど」  原子力は危険ではあるが、安全に扱えれば問題がなく、世界で唯一の被爆国である日本でも導入されるようになった。高度成長期も相まって、日本中の各地では原発の増設が進んでいる。 「アンサーのように危険性が低い王魔は例外中の例外だ。確認されている王魔の殆どは、危険極まりない連中ばかりで、各国で手をやいている。夕海町に封印されている夕刻ノ魔は、確認できていないが実力が本物なら王魔の中でも、ズバ抜けた危険なヤツだろう」
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