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大夕海祭を明日に控えた夜、辻利夢葉が携帯を開くとメールが届いてた。
宛名は『二人の恋を応援する同盟 会長へ』。それを見て、夢葉はすぐに誰からのメールであるか、すぐに分かった。
「夢葉、どうした?」
携帯をジッと見ていた夢葉に向かい合って食事をしていた静佳が尋ねた。食事中、基本的には携帯やスマホの類は二人は弄らないようにしていた。だが、このご時世、いつ緊急の連絡が入るか分からない。電話よりも長い用件を一度で伝えることができるメールの方が遣り取りがずっと楽だから。それでも、夢葉は宛名や件名を確認するだけで、食い入るように携帯を見ていたのは珍しく思い静佳は気になっていた。
静佳に尋ねられた夢葉は慌てて携帯を畳むとスカートのポケットにしまい。
「何でもありません。友達から明日の大夕海祭への誘いです」
「大夕海祭か・・・。夢葉は夕海神社の方にでも行くのか?」
「兄様はどうするのです」
夢葉は蓮根餅の菊花揚げを口にして静佳に聞き返した。
明日の大夕海祭。何も知らない人達にしてみれば、夕海町を上げての祭りにしか見えないだろう。この祭りの真意を知っている者達にしてみれば、一大決戦でもあった。当然、静佳も夕刻ノ魔との戦いに望むつもりでいた。
「俺は当然、夕刻ノ魔と戦う。とはいっても、どこまで戦えるか」
夕刻ノ魔はとてつもなく強いということを何度も静佳は父親の輝葉から聞かされていた。対魔部隊を率いる輝葉が強いと口にし、尚かつ倒せなかった逢魔。二十六年前の件をきっかけに、夕刻ノ魔は正式な逢魔の中でも飛び抜けた実力を持つ王の魔、王魔として数えられるようになった。恐ろしく強いのを相手にしなければいけないのだ、相応の覚悟は必要である。
だが、勝つ必要はない。大夕海祭はいうならば、夕刻ノ魔を封印する為の大掛かりな儀式の祭り。夕海町の中心街は人目に付かないよう随所に封印する為の場が設けられている。封印を受け持つ細辻家が儀式を終えるまでの時間、夕刻ノ魔が封印された朱月川から出ないよう戦うのが目的なのだ。最初からまともな戦いは夕刻ノ魔には望めないとされていた。
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