その4

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 一ヵ月前の模歌水族館で夢葉は夕海高校のオカルトクラブの部員である亜華火と保美と出会った。静佳とソーヤがキスした瞬間を激写し喜んでいるのを見かけた夢葉が話を聞くと、彼女達もソーヤの恋を応援していると言うのだ。恋という点に関しては、静佳とソーヤの関係なので夢葉はオカルトクラブの二人ほど深入りするつもりはなかった。ただ、彼の妹としてはソーヤとの関係が進むことで、少しでも静佳の対人過敏症が改善するのならば、嬉しいことはない。最終的な目的はお互い、食い違いはあるが協力関係を気付かない手はなかった。  オカルトクラブの面々は静佳の妹である夢葉の協力を。  夢葉はソーヤが所属しているオカルトクラブの協力を。  静佳とソーヤが知らないところで、『二人の恋を応援する同盟』なる勝手な同盟が結ばれていた。 「ふふふふ・・・。これで兄様の・・・」  夢葉はこれから先のことを考えては不敵な笑みを浮かべて楽しんでいた。  優香は自宅に戻ってからも、学校で出た宿題に追われていた。高校二年とはいえ、来年には大学受験が控えている。いくら、オカルトクラブを立ち上げたとはいえ、勉強を疎かにはできない。好景気と言われていたバブル期は終わりを告げている。いつまでも、浮かれた気分でいては、世の中に取り残されてしまう。親に苦労をかけたくないので、自立できるように努力しなくては。  母からは無理はしないで、誰かにもらってもらえばいいと冗談交じりで言われるが、そんなのは関係ない。これからは、もっと女性は活躍すべき時代だ。努の母親だって、世界中を飛び回っているビジネスウーマンである。自分にだって、何か出来る仕事はあるはずだ。  それに、勉強に集中していないと。 {誰かにもらってもらえばいいじゃない}  机に向かって集中して勉強をしてた優香の頭に、母の言葉が繰り返された。本気で言ってたかは分からないけど、その言葉が頭を過ぎるたびに努のことを考えてしまう。 「/////」  優香はその都度、席を立つと部屋の壁に頭を打ち付けて邪念を振り払おうとしてた。 (ダメよ。余計なことを考えては・・・!恋なんて・・・恋なんて・・・!)  今まで恋などしたことがなかった。努に対して複雑な感情を抱いているのは女性に対するモラルがない努の行動に対してなのだ。
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