3日目 8月14日

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パニック心理状態にある彼らは、正常な思考にはなかった。ただ、彼らの頭の中にあったのは、【どちらかのチームが全滅しない限り、実験は終わらない】というルールの一文だ。 「キャ!」  このままでは本当に、BSの連中によって皆殺しにされてしまう。  カッターナイフやバールなど、凶器を握りしめたBSのメンバーたちが、じりじりと空木たち4人を囲んだ輪を縮めていく。 「格闘技の中で、柔道が最強だということ、みしてやらァ!」  飯豊は柔道部だ。両手をあげて構えた飯豊は、飛びかかる者には、容赦なく投げ飛ばすつもりでいた。 「飯豊は柔道部だ、うかつに近寄るな!」  飯豊を知るBS男子が警戒した。 「そこをどけ! 道をあけろ!」  叫んだのは奥白琴次郎だ。奥白は隠し持っていたナイフを取り出すと、接近したBSのメンバーへとナイフを振りかざした。 「奥白、お前ナイフなんかいつのまに?」  丸腰で行こうと言っておいたはずが、奥白は密かにナイフを隠し持っていた。 「おい安達! なぜボディチェックをしなかった!?」  白馬がメンバーに怒鳴りつけた。 「したさ! したけど、すまねぇ」  玄関先で空木たちをボディチェックした安達と鹿島が頭を垂れた。 「安達ィ~! 鹿島ァ~! もしも真夏が、そのナイフで刺されていたら、どうするつもりだったよ!?」  魚沼陽光は歯ぎしりして、二人を睨み付けた。 「後で、罰を与えるぞ」 「チッ!」安達と鹿島は顔をしかめて、舌打ちをした。まだ二人には、『陽光のくせに』という見下した感があった。   空木は前方の高妻絵梨花と後方の魚沼陽光を警戒しつつ、奥白と背中を合わせた。  奥白は聞かれないようにこそりと空木に告げた。 「協力者がいる」 「!?」  どうやらナイフは、宿舎に入った後で、BSの誰かによって奥白に手渡されたもののようだ。 「飯豊、荒島、いいな? 俺が合図したら、一気に走り抜けろ」
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