28人が本棚に入れています
本棚に追加
/176ページ
パニック心理状態にある彼らは、正常な思考にはなかった。ただ、彼らの頭の中にあったのは、【どちらかのチームが全滅しない限り、実験は終わらない】というルールの一文だ。
「キャ!」
このままでは本当に、BSの連中によって皆殺しにされてしまう。
カッターナイフやバールなど、凶器を握りしめたBSのメンバーたちが、じりじりと空木たち4人を囲んだ輪を縮めていく。
「格闘技の中で、柔道が最強だということ、みしてやらァ!」
飯豊は柔道部だ。両手をあげて構えた飯豊は、飛びかかる者には、容赦なく投げ飛ばすつもりでいた。
「飯豊は柔道部だ、うかつに近寄るな!」
飯豊を知るBS男子が警戒した。
「そこをどけ! 道をあけろ!」
叫んだのは奥白琴次郎だ。奥白は隠し持っていたナイフを取り出すと、接近したBSのメンバーへとナイフを振りかざした。
「奥白、お前ナイフなんかいつのまに?」
丸腰で行こうと言っておいたはずが、奥白は密かにナイフを隠し持っていた。
「おい安達! なぜボディチェックをしなかった!?」
白馬がメンバーに怒鳴りつけた。
「したさ! したけど、すまねぇ」
玄関先で空木たちをボディチェックした安達と鹿島が頭を垂れた。
「安達ィ~! 鹿島ァ~! もしも真夏が、そのナイフで刺されていたら、どうするつもりだったよ!?」
魚沼陽光は歯ぎしりして、二人を睨み付けた。
「後で、罰を与えるぞ」
「チッ!」安達と鹿島は顔をしかめて、舌打ちをした。まだ二人には、『陽光のくせに』という見下した感があった。
空木は前方の高妻絵梨花と後方の魚沼陽光を警戒しつつ、奥白と背中を合わせた。
奥白は聞かれないようにこそりと空木に告げた。
「協力者がいる」
「!?」
どうやらナイフは、宿舎に入った後で、BSの誰かによって奥白に手渡されたもののようだ。
「飯豊、荒島、いいな? 俺が合図したら、一気に走り抜けろ」
最初のコメントを投稿しよう!