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斧を手にした魚沼陽光が迫った。
「この薄汚いゴキブリどもめ! 一匹も逃がすな! こいつらを始末した後で、新館の連中も皆殺しだ!」
その時だった。ホールに掛かっていた厚手のカーテンが一気に開け放たれた。
「うっ!」
強い日差しがガラス戸から差し込んで来て、暗い所に目が慣れていたBSのメンバーたちの網膜に光りが焼きついた。
「今だ!」
奥白が叫んだと同時に4人は、ガラス戸に向かって駆けだした。
「どけどけ!」
飯豊が、往く手を遮った魚沼陽光の腰の辺りに体当たりをすると、魚沼の身体が一回転して宙へと舞い上がった。
「キャ――ッ!」
BSの女子たちが、まるで檻から脱走した猛獣でも見たかのように、悲鳴を上げて道を空けた。
「新館まで走るぞ!」
ガラス戸に体当たりして突き破った飯豊純平に続いて、月山未央、空木智治、奥白琴次郎の順で、外へと飛び出した。
「追え! 逃がすな!」
空木たちの背後で、怒声が飛び交っていた。
去りゆく際に、空木はいまいちどホールへと振り返った。
床に倒れたままの白根麻衣の身体はぴくりとも動きはしなかった。
すまない、白根……。
空木は胸を締め付ける怒りと悲しみをこらえながら、ただひたすらに、新館目指して林道を走った。
「待てやコラァ―――ッ!」
「空木を殺せ! やつがRAのリーダーだ!」
鋤や鎌など、農機具を携えたBSのメンバーたちが尚も執拗に追いかけてきた。
「もうダメ! わたしを置いて、逃げてぇ!」
息を切らせた月山が足を止めた。
「月山! あきらめるな!」
空木は彼女の手をひいて、二人は追ってから逃れようとしたが、追いつかれるのは時間の問題だと思われた。
その時だった、前方に大勢の人の気配を感じた。
「お、お前たち!」
空木たちの前方から、得物を携えたRAのメンバーが総出で、出迎えに来ていた。
「未央! がんばれ!」
甲田摩也は鍬(くわ)を振りかざすと、残りのメンバーがいっせいに喊声を上げた。
「BSの奴らを追い払え!」
「くそ! おい、退くぞ!」
追いかけて来たBSの男子たちはこれでは分が悪いと、尻尾を巻いて逃げ帰っていった。
このタイミングでRAのメンバーたちが迎えに来てくれなければ、月山や彼女の手をひいた空木も捕まえられていただろう。
「間に合ってよかった!」
甲田摩也が、肩で息をする空木の元へと駆け寄った。
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