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空木智治はこのサマーキャンプを通してようやくそのことを理解した。
「ジュンペイ、奥白」
空木は班長の2人を呼び寄せた。
「BSの連中は、A地点の報酬確保に重点を置いているようだ。意見を聞かせてくれ」
飯豊が言った。
「先行しているBSを後から追いかけたんじゃ不利だろ? A地点を諦め、全力でB.C地点を狙ったほうが良いって」
「奴らの狙いは武器に決まってる。武器を使わせないためにも、俺たちが武器を確保しなくちゃ」
奥白の意見に、空木は反論した。
「そうだろうけど、皇海が言ったように、武器がA地点にあるなんてことは、明記されてない」
「う……ん……。BSの奴らは、武器がA地点にあると確信しているようだけど」
ふたたび飯豊が言った。
「トモヤン、ここで考え込んでも仕方がない。手筈通り、3つに分かれてそれぞれの地点へ向かおう。それでもし、有力な相手とぶつかるようなら、迷わず逃げるということで、どうだろうか?」
「そうだな」
奥白は眉根にしわを寄せた。
「それにしても、ポイントなんかもらっても全然うれしくないぜ。狙うは武器か食糧だな」
「そうでもない」と空木。
「昨日、魚沼が、白根麻衣を殺したことで、BSに5ポイントが入った。そのことで、俺たちは4点差で負けている。このままだと、次に陣場に命を狙われるのは俺たちRAの誰かだ。これを覆すには、俺たちがBSの誰かを殺して逆転しなけりゃいけない。そんなこと、出来るか?」
飯豊と奥白は無言で首を振った。
「そこでだ。食糧と20ポイントが手に入れば、武器は手に入らずとも、あとは何処かで身を隠していれば良い」
意図に気づいた奥白が、指を鳴らした。
「空木、それは名案だぞ! 上手くいけば、武器を手にしたBSと、ポイントの低い方を処刑しなくちゃいけない陣場との間で、戦争が始まるってもんだ。BSの奴らは卑怯だと罵るだろうけどな」
「人の命が、わけの分からないポイントで取引されるんだな……」
飯豊が視線を落としてつぶやいた。
「ジュンペー、気持ちは分かるが、今は奴のルールに従うしかない。いずれ、チャンスは来る。その時は、俺が陣場を殺る」
「トモヤン……」
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