第1章

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男が仕事に出掛けたら身支度をする。 親友のアイルと会う約束があるからだ。 アイルは美しいから、念入りに身だしなみを整える必要がある。 洗面所で自分の姿をチェックする。 満足 自分もアイルに負けず劣らずいい女だ。 男からの一番最初のプレゼントで、ハートのチャームが可愛らしいネックレスは肌身離さず着けている。 白金のそれは色白の私に良く似合っている。 前にアイルに会った時に高価な物だと聞いた。 愛されてるね。と。 愛されてる…か。 フ…と自嘲気味に笑った後に、鼻の奥がツンとする。 泣くな泣くな 首をブンブン横に振って家を出る。 「わ!」 「わ!?」 「何しけた顔してんの?」 「アイル…ビックリした…何で?」 「何が何で?」 「何でうちの前にいるの?」 「いーじゃん!迎えにきたんだよ♪」 妙にハイテンションのアイルにゲンナリする。 「今日はアイルに相談があって…。」 「そうだ~ん?ん?ん?食事しながらにしよ!よよよよ~ん♪」 男は私が外食する事を嫌う。 自分の用意した食事だけを食べて欲しいと、日頃から優しい口調ではあるが、強く言われているのだ。 変なところで、変な風に束縛してくる、変な男。 自分の料理ナルシストなのかしら。 「マーオ?マオちゃーん?聞いておりますかい?」 「私は、食べてきたからいいや…。」 ヘラヘラしていたアイルの目が急に座る。 「…白けるわ。」 怖い。 「じゃあ、飲み物だけのもうかな…。喉渇いちゃった。」 「ま、ぶっちゃけ私もお腹減ってないんだけどね!ブハハ!いーよ!何か飲もうぜ!」 「外暑いからうち…くる?」 「いーの?あんたらの愛の巣に私みたいなアバズレが入って。いひひ。」 「今、あの人いないし、今日は遅くなるみたいだから…。」 胸の奥がキリキリする。 「じゃ、遠慮なくお邪魔しまーす!」 そう言うと、アイルはズカズカ上がってドスッと男専用の椅子に座る。 「…適当に座ってと言おうとしたけど、そこだけは止めて。」 アイルは目を細めてニヤリとし、顎をしゃくる。 「それならあっちにしようかな?」 開いたまんまの寝室のドアの向こうに見える、ベッドの方を向いて。
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