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男が仕事に出掛けたら身支度をする。
親友のアイルと会う約束があるからだ。
アイルは美しいから、念入りに身だしなみを整える必要がある。
洗面所で自分の姿をチェックする。
満足
自分もアイルに負けず劣らずいい女だ。
男からの一番最初のプレゼントで、ハートのチャームが可愛らしいネックレスは肌身離さず着けている。
白金のそれは色白の私に良く似合っている。
前にアイルに会った時に高価な物だと聞いた。
愛されてるね。と。
愛されてる…か。
フ…と自嘲気味に笑った後に、鼻の奥がツンとする。
泣くな泣くな
首をブンブン横に振って家を出る。
「わ!」
「わ!?」
「何しけた顔してんの?」
「アイル…ビックリした…何で?」
「何が何で?」
「何でうちの前にいるの?」
「いーじゃん!迎えにきたんだよ♪」
妙にハイテンションのアイルにゲンナリする。
「今日はアイルに相談があって…。」
「そうだ~ん?ん?ん?食事しながらにしよ!よよよよ~ん♪」
男は私が外食する事を嫌う。
自分の用意した食事だけを食べて欲しいと、日頃から優しい口調ではあるが、強く言われているのだ。
変なところで、変な風に束縛してくる、変な男。
自分の料理ナルシストなのかしら。
「マーオ?マオちゃーん?聞いておりますかい?」
「私は、食べてきたからいいや…。」
ヘラヘラしていたアイルの目が急に座る。
「…白けるわ。」
怖い。
「じゃあ、飲み物だけのもうかな…。喉渇いちゃった。」
「ま、ぶっちゃけ私もお腹減ってないんだけどね!ブハハ!いーよ!何か飲もうぜ!」
「外暑いからうち…くる?」
「いーの?あんたらの愛の巣に私みたいなアバズレが入って。いひひ。」
「今、あの人いないし、今日は遅くなるみたいだから…。」
胸の奥がキリキリする。
「じゃ、遠慮なくお邪魔しまーす!」
そう言うと、アイルはズカズカ上がってドスッと男専用の椅子に座る。
「…適当に座ってと言おうとしたけど、そこだけは止めて。」
アイルは目を細めてニヤリとし、顎をしゃくる。
「それならあっちにしようかな?」
開いたまんまの寝室のドアの向こうに見える、ベッドの方を向いて。
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