第1章

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「……。」 「冗談だよ。」 アイルは床にドカッと座る。 「アイル…それ、凄いね。」 「ん?どれ?」 「爪」 「あー!いーでしょ!可愛い?付け爪♪」 アイルの爪の一つ一つに赤や紫や水色の付け爪が付けられている。 「邪魔じゃない?ストレス溜まらない?」 そもそもアイル、あんたもういい歳なんだから…と言う言葉は飲み込む。 「別にぃ?うちの人は可愛い可愛いってべた褒めしてくれるしぃ♪」 ズキ 「え、何?」 「何が…何?」 「マオ、めっちゃ暗い顔。」 「アイルのテンションが高すぎるんだよ。」 不自然なぐらいにね。 という言葉も飲み込む。 「そおかなぁ~?で、それより相談て何よ?」 「……。」 「男の事だろ?」 ! 「なん…で?」 「それしかないじゃん。」 アイルは勘が鋭い。 私は電源が入った様に一気にまくし立てる。 「ここ最近キスや愛撫が減ったの!愛の言葉も囁かなくなったの!いつも帰りが遅いの!仕事かもしれないけど、違うかもしれない!食事?食事は相変わらず作ってくれるど…。毎晩一緒にも寝るけど…でも!そう…寝るだけなの…。私は親を捨てて彼の元にきたのに!ずっとずっとプロポーズの言葉を待っているし、子供だって欲しい!なのに…それなのに…!うぅ…。」 見なくても分かる。アイルが憐れんだ目で私を見ている事…。 アイルはご主人に愛されている。 やる事やって逃げた最低野郎の子を孕んだアイルは、膨れたお腹で途方に暮れて、公園の噴水をボーッと眺めていた。 公園に散歩にきていたアイルのご主人は、そんなアイルに一目惚れをして、膨れたお腹のアイルに熱烈アプローチをかけ、自分の家に身重のアイルを住まわせ、出産にも立ち会い、今でもアイルとアイルの双子ちゃんを溺愛している。 恩知らずなアイルはそんな中浮気をして、浮気相手の子を孕んだ。 これには流石のご主人も激昂するかと思いきや、膨らんだ腹のアイルに「弱ったな…勘弁してよ…。」と困惑しつつも結局受け入れたというから驚く。 そうして「僕には面倒見切れない」と産まれたばかりの三つ子を里子に出したというから、また驚きだ。 アバズレアイルに変人旦那 クレイジーな奴ら でも…私はアイルが羨ましい。
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