第1章

9/10
前へ
/10ページ
次へ
まん丸お月様の光を この植物にたっぷり浴びせて 食べる。 うん、無味無臭。 何かのおまじない? アイルらしくないわね。 うまくもまずくもない植物を飲み込むと、身体に力が漲る様な感覚。 私の身体はみるみる大きくなり、男と同じぐらいになる。 そうして、意思とは関係なく、何故か二本の足でヒタヒタ歩き始める私。 この足は何処に向かっているの? 辿り着いた先は公園のベンチ。 そこには私の愛する男と、女が寄り添って座っている。 反射的に私は二人の頬を張りつける。 パシン!パシン! 「痛っ!」 「え、ちょっと何?何なのこのおばさん! 」 おばさん… 「私の男にちょっかい出しといて何言ってるの?」 震える声でそう言うと 「は?私の男?ちょっとあなた二股かけてたの!?しかもこんなババアと!」 「んな訳ねーだろ!おいババアお前何なんだよ!誰だよ!」 涙が溢れる。何で?どうして?何で 「酷いよ…ずっと…一緒に…暮らしてきたのに。知らないなんて酷いよ…。」 「怖い。幽霊…ですか?俺あなたと暮らしてた覚えないんすけど…。」 「やだぁ…。」 恐怖に震える二人が憎い。 涙が止まらない。 「私の何がいけなかった?食事?知らなかったのよ。あなたがネズミや雀が嫌いだなんて。私からしたらご馳走だから、あなたも喜ぶと思って…。あなたが嫌がるから外でも食べていないわ。あなたの用意した食事しか摂っていない。」 薄気味悪そうな目で私を見つめ、小刻みに震えながら私の男にしがみつく女。 何かを考えるような顔をしている私の男。 「あなた!この人から何かプレゼント貰った事ある!?私はずっとこれを身につけてる!ずっとずっと!お風呂も寝る時もずっとこれを!この人からの初めてのプレゼント!愛の証!」 私がネックレスのハートのチャームを握り締めると、男はハッとした顔をする。 「マオ…なのか?」 小生意気な女は「マオぉ?」と小馬鹿にした様に言い、キョロキョロ辺りを見回す。 「マオってあなたのうちの猫の?ちょっとやだ。名前聞いただけで目鼻が痒くなる!私猫アレルギーなんだから勘弁してよぉ。」 猫 「でもこんなとこで見かけるなんて、やっと追い出してくれたんだね!やっとあなたのうちにお泊まり出来る!っておばさんまだいたの?どっかいけよ!警察呼ぶよ?」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加