うっかり神様

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 神様は仰った。 「やってもうた」  それからこうも付け加えられた。 「うほん。良くあることだ」  神様の声は聞こえるというよりは、細胞に響く感じがした。  神様は、人間に似ている。 「それはお前が人間だからである。鳥の場合は鳥の姿に、蟻の場合は蟻の姿になる。つまり、自らが親しみを覚えていた形に見えるのだ。まあ人間に限って言えば、目に映るものが必ず真実とは言えんが。電気信号が脳へ伝わり像を結ぶまでの間に、自己の都合に合わせて修正が加えられるのが人間なのだ。例えば、青空に真っ赤な色の「A」が浮かんでいたとする。純粋な人間の子供ならば、間違いなく赤いAと言う。しかしその形と色が、知識を重ねた大人には捉えられなくなるのだ。彼らはまず、空に色付きアルファベットが浮かぶ事実を信じられない。すると、ある者はアルファベットに似た白い雲に見え、またある者は、真っ赤な丸い夕日に見える。時間や空間といった概念もまた然りである。ともかく人間は面白い。私の実験によれば、純粋な大人というものもいて、そういうやからは」  神様は、話が、長い。 「はて、何の話だったか。ああ、そうだった。お前には、そのうちチャンスを与えよう。幸い、まだ下界とのつながりもある。それまでは、ゆっくり休むがよい」  なんだか、ねむい……
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