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だが、そんなものでは隠せる部位はしれている。
龍一はもどかしそうに自分が着ていたTシャツを脱いで、美百合の頭から勢いよく被せた。
龍一のシャツは、小柄な美百合の尻の下までをすっぽりと覆う。
「美百合ちゃん。ばあちゃんが、キュウリいらないかって……」
まるでタイミングを見計らったかのように、ハウスの入り口に姿を見せたのは浩輔だ。
そこに上半身裸の龍一と、薄っぺらなシャツ一枚で立つ美百合の姿を見つけて、まるで狐に化かされたように固まる。
抱えていたキュウリをボトボトと地面に落として、美百合の姿態をまじまじと見つめている。
しかし、そんなあられもない格好を目撃されても、不思議なことに美百合の中には羞恥心が湧いてこない。
キュウリを貰ったうれしさで、浩輔にとびきりの笑顔を向けた。
「わあ浩ちゃん。うれしいな。おばあちゃんにもお礼を――」
浩輔に歩み寄ろうとしたのを、龍一が後ろから攫うように抱きとめる。
クルリと立ち位置を変えて、自分の背中に隠すように美百合を押し込む。
「――出ろ」
そして地を這うような低い声で、龍一は浩輔に命じた。
「今すぐ、ここから出ていけ!」
「ハヒッ!」
浩輔は悲鳴のような返事をして、ハウスから即座に駆けだして行った。
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