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「美百合? お前どうしたんだ?」
龍一は問うが、その意味が美百合にはわからない。
ただ何度見ても、いつも見惚れてしまう龍一の美しい顔が目の前にあって、胸が高鳴る。
「りゅう……いち……」
切ない想いをのせたかすれ声で、その名を呼ぶ。
頬が熱い、身体が熱い。
龍一の冷たい手のひらで、今すぐ冷やしてもらわなければ、身体がどうにかなってしまいそうだ。
「龍一、キスして」
美百合の薄く開いた唇からこぼれるのは、甘いおねだり。
だけど龍一は、これまで見たこともないほどの厳しい眼差しで、美百合のことを睨んでいた。
「龍一……」
切なくて堪らなくなって、美百合は龍一の頬に手を伸ばす。
その頬に触れただけで、美百合の身体に痺れるような快感が走る。
美百合をこんな風にさせるのは龍一だけだ。
そこにどんな男も入り込む隙はないのに、龍一はいつも過剰なほどのヤキモチを妬く。
今だって、せっかくキュウリをくれた浩輔を怒鳴り帰してしまった。
ヤキモチは確かにうれしいことだけれど、それよりも欲しいものがある。
「龍一、傍にいて。どこにも行かないで」
ずっと我慢していた望みが、口から零れ出た。
「ねえ、私を抱いて」
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