3 サマールビー

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龍一は軽く舌打ちをする。 昔から性犯罪が一番きらいだった。 『元』上司はぬけぬけと、 「薬効は子供のオモチャ程度の物だ。キチンと抜いてしまえば、覚醒剤のような揺り返しの話も聞かない。 たまたま君の住む地域が発生源だったから、君へのご機嫌覗いを兼ねて知らせてみただけだよ」 「ご丁寧な時候の挨拶、いたみいります」 龍一はせめてもの仕返しのつもるで、声にイヤミの色を込める。 しかしまったく効果はなく、桜庭は鼻先だけの返事を返してきただけだ。 この『元』上司、そんなしおらしいタマじゃなかった。 それに今回の件すらも、おそらく事が大きくなる前に、龍一の好奇心を刺激して、体のいい情報源にしようとした思惑が見て取れる。 だが実際は、情報源どころか当事者に成り下がっているではないか。 ――なんたる失態! 「では何故、そのオモチャがウチのハウスに生るんです」 怒鳴りかけて、ふと不安に打ち震える。 「俺のせいですか? 俺の正体が外に漏れた?」 龍一のかつての仕事ぶりに、復讐を企む組織ならいくらでも名前が浮かぶ。 「いや、それはありえない」 しかし桜庭はすぐに否定した。 「君の過去は完璧に隠蔽されている。この通話も特殊な妨害電波によって盗聴される心配もない。我が国の防御システムは、そんなに安易に突破出来るものではないよ」 その声は確かな自信に裏打ちされている。 ならば、何故だ! 「偶然としか言いようがないね。ストロベリードロップスを作るには養液栽培のイチゴ畑が必要だ。 栽培方法はいたって単純。イチゴ栽培の養液の中に、ある薬品を混ぜてイチゴを育てる。時が過ぎ、甘い果実が実ればストロベリードロップスの完成ってわけだ」 桜庭は続けた。 「君のイチゴ畑が、運悪くヤツらに目をつけられた。理由はそれだけだろう」 『元』上司の気の毒にといった調子の声音に、龍一はますます怒りを燃えたたせる。 『誰か知らんが、明日の朝日を拝めると思うな!』
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