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ストロベリードロップスを扱っている、広域暴力団の事務所の住所、構成員数、代表者、
今、政府が掴んでいるすべての情報を聞きだした。
美百合の父親には、とりあえず自室に引っ込んでもらっている。
龍一は冷たい声で桜庭に告げた。
「掃除屋と組の構成員の人数分の死体袋を手配してください。明日の朝までには片をつけます」
電話の向こうでは小声で笑う声。
「気の毒としか言いようがないね。相手は知らないうちに、虎の尾どころか、最強の竜の逆鱗に触れてしまったようだ」
「笑いごとじゃありません。美百合はすでにイチゴを口にしてしまったんです。
どうすればいいんですか? 彼女はこれから一体どうなる!」
落ち着きたまえ、と電話の向こうは言う。
「今はまだ解毒後に人体に影響が残るといった報告は入ってない。まあ中毒から抜け出すまでは多少苦労するだろうが、副作用の話も聞かないし、安心していい」
「安心なんか出来ますか! 第一、どうやったら薬物が抜けるんですか。あの状態のまま放っておけるわけがないでしょう!」
「一番いいのは入院させて専門家の手でゆっくり快復させることだ。常用期間が短ければ、それに比例して快復も早い。
彼女の程度なら、睡眠薬でも使って、薬効が抜けるまで眠らせておけば大丈夫だろう」
龍一は少し唇を噛む。
「ストロベリードロップスと睡眠薬が、妊娠初期の女性に影響する可能性は?」
「ほお、彼女は妊娠したのかね?」
「わかりません! だがしていないとも断言できない!」
龍一は携帯に向かって怒鳴りつける。
「専門機関に入院させたまえ。それが一番間違いないし、安全だ」
『元』上司の言うことは正論だが、あんな顔をする美百合を、自分以外の人間に見せられるか。
すると、
「――龍一ぃ」
目を覚ましてしまったらしい、美百合の切なげな声が二階から聞こえてきた。
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