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龍一が次に訪れたのは、隣の吾妻浩輔の家だ。
午前中に美百合を尋ねてきた浩輔は、まるで龍一のイチゴがダメになることを予告するような言葉を吐いてたことを覚えていた。
浩輔にも家族がいるが、誰にも気づかれることはなく、龍一は浩輔がひとり寛ぐ二階の部屋に侵入する。
アクションゲームに興じる浩輔の背後から、後頭部に銃を突きつけ、
「お前か?」
尋ねる。
「は?」
現状が理解できなくて、銃にかまわず振り返ろうとする浩輔に、頬の形が歪むほど強く銃口を押し付けた。
「ウチのイチゴに妙なクスリをプレゼントしてくれたのは、お前なのかと聞いている」
湧いたように現れた龍一の姿に、浩輔は呆然とした様子で反応が鈍い。
テレビの画面は、浩輔のルーズとゲームオーバーを告げている。
「……何やってんだよ、お前?」
浩輔には龍一の握る銃など、モデルガンにしか見えないのだろう。
思い知らせてやるために、銃のスライドを引いて一発発砲。
銃弾は浩輔の腿をえぐって、床にめり込む。
「ギャッ!」
浩輔は叫びをあげてうずくまり、痛みに頬を歪める。
ようやく脅えた涙目になって龍一を見あげる。
「言えよ。お前だろ? 誰に頼まれた?」
龍一はその顔にどんな表情も作らない。
かつての仕事時代に培った無表情だ。
階下から、銃声よりも浩輔の悲鳴に驚いた家族から、安否を問う声がかかる。
龍一は顎だけで答えろと命じつつも、銃の狙いは浩輔の顔面から外さない。
浩輔は階下に向けて、
「なんでもねーよ」
と涙声で怒鳴った。
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