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4 ペチカプライム
玄関を入ってたたきをあがった右隣が、20畳ほどの広さの事務所になっている。
玄関からはカウンターになったガラス越しに、電気の点いた事務所の中が窺えた。
こちらに背中を向けてソファーに座っていたふたりの男が、物騒な挨拶で侵入してきた龍一と浩輔を認め、怒気をはらんだ顔で立ちあがる。
「あぁ? なんじゃあ、てめーら」
龍一は靴も脱がず廊下を進み、事務所へ続くドアを開けると、銃を持った腕を伸ばして、ためらいなく、
――ふたりの男の頭を撃ち抜いた――
事務所の奥のテレビ画面には、ポルノDVDが映し出されている。
怒声と銃声に驚いた別の男が、奥の部屋から顔を覗かせた。
龍一が銃先を向けて放った弾丸は、針の穴を通すように男が開けたドアの隙間に飛び込み、男の身体は向こう側に崩れ落ちる。
龍一は、無慈悲な非情さで、そこにいた男たちに死を与えた。
そうすることが当たり前だといった風な、まるで死神のような所業。
――ここ法治国家だよな。
浩輔は、自分の知っている常識と、これまで生きてきた常識のすべてを無効にされた喪失感に、玄関をあがった暗い廊下で腰を抜かす。
へたりこむ直前に目撃した、最初の男たちが座っていたソファーに広がるどす黒い血の染みが、瞼の裏に貼りついて、生臭い臭いが鼻腔をしびれさせる。
なんだか、アクションシューティングの世界に入り込んでしまったみたいだ。
ただ最近のどんな過激なアクションゲームでも、臭いまで付いたハードさはない。
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