110人が本棚に入れています
本棚に追加
ガラスの破裂音が響き、照明が撃ちぬかれて灯りが消える。
窓には厚いカーテンがかかっていて、部屋の中はテレビが放つ、ほの暗い灯りだけに沈む。
男たちの怒鳴り声が響き、踏み散らすような足音。
――そして銃声――
「バカヤロウ! うかつに踏み込むな。狙い撃ちされるぞ」
どうやら龍一は、事務所の奥のテレビの灯火を頼って発砲しているようだ。
自分以外の動く影はすべて撃てばいいのだから、有効な手段だとも言えよう。
だが、その方法に気づいた組員たちも行動を止め、事務所の中は一瞬だけ静まりかえる。
DVDから、場違いすぎて笑えるほどの女の喘ぎ声。
「マジかよ、あいつ半端ねぇ。いったい何者だよ」
浩輔がつぶやく先から、今度はバタバタと慌しい足音が聞こえ始める。
銃声は聞こえないが、代わりに、
「ガッ!」
「グワッ」
という短い悲鳴と、
「なんだ、どうした?」
戸惑ったような焦ったような声が響く。
好奇心に負けて再びドアの隙間からそっと顔を覗かせれば、テレビの蒼い灯りの中に、瞬間、回転する龍一の身体が横切る。
「ギャッ!」
誰かが、龍一の後ろ回し蹴りを喰らって、部屋の端までふっ飛ばされてきた。
事務所の中央にあった応接セットを粉々にしながら、こちらに突っ込んでくる。
ガラスが割れる音。
灰皿に激突して吸殻が散ったのか、鼻にくるニコチンの臭い。
最初のコメントを投稿しよう!