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5 サマーベリー
「動くなよ。動くんじゃねえぞ」
浩輔はリボルバーの引き金に指をかけて、一瞬たりとも龍一から目を離さない。
まあ先ほどまでの龍一の動きを見てなお、銃一丁持ったぐらいの有利さで愚かな油断をするほど、浩輔もバカじゃないと言ったところか。
龍一は、広げていた両手をゆっくりと身体の横に降ろした。
本来ならホールドアップが相応しいのかもしれないが、誰がそんな屈辱的なポーズを見せるか。
銃を突きつけられても、龍一の余裕たっぷりの表情は消えない。
それが気に入らないのか、浩輔は足早に近づいてくると、手にした銃を振り上げてグリップで龍一のこめかみを殴りつけた。
「!」
無抵抗のまま一撃、喰らう。
しかし龍一は、頭を少し揺らしただけで、その場で耐えた。
「……お前、生意気なんだよ」
荒い息遣いの下で浩輔が言う。
浩輔にしてみれば、渾身の一撃だったのだろうが、龍一の経験してきたことに比べれば、たいしたダメージではない。
龍一のそんな余裕に腹を立てたのか、浩輔はカチャリと音を立てて、リボルバーの銃口を、龍一の顔面に突きつけてきた。
「その綺麗な顔、グチャグチャにしてやるよ」
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