5 サマーベリー

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明け方龍一は、愛車のプジョーを自宅の玄関に突っ込む勢いで横付けすると、 玄関先で頭を抱えてうずくまり、憔悴しきった様子の父親に声ひとつかけてやることなく、一足飛びで階段を駆け上がっていく。 美百合は、昨夜龍一が縛りつけたままの姿で、ベッドの上にいた。 ただし、猿ぐつわの奥から低い嗚咽を漏らす美百合の様子は、涙と鼻水と涎で滅茶苦茶で、とても無残だった。 きっと夜中じゅう暴れたのだろう。 美百合の身体は全身汗だくで、そして自分が漏らした汚物にまみれている。 「……美百合、すまない。すまない……」 龍一はすぐさま美百合をすべての拘束から解放し、汚物に構わずその胸に強く抱きしめる。 「――りゅう……いち……」 息も絶え絶えな様子で美百合は龍一の名を呼んだ。 「美百合、すまない」 龍一は何度も謝罪しながら、美百合の身体を抱きしめる。 美百合のこんな哀れな状態に、胸をえぐられるような後悔に襲われる。 こんなにひどい目にあわせてしまった。 何か他の方法を選べなかったのかと、自分の無能さに自分を殴りつけてやりたくなる。 「龍一ぃ……」 美百合も泣くが、龍一も泣く。 思わず知らず涙が頬をつたう。 己の力の無さが情けなくて、堪らなかった。 「痛かったか? ごめんな。辛かったろう」 だが美百合は、 「龍一、どこにも行っちゃヤダ」 とむせび泣く。 龍一は、 「……そうだな。すまなかった」 ますます強く、美百合をかき(いだ)く。
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