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エピローグ レッドパール
美百合は龍一と共に喪服に身をつつみ、隣家の長男、吾妻浩輔の葬式に参列した。
浩輔は家族が知らない夜の間に出かけて、車ごと沢に滑落する大事故を起したらしい。
シートベルトをしていなかったせいで、滑落途中に身体が車外に投げ出され、翌朝には大破した車だけが沢で発見されて、普段は静かな村が大騒ぎになった。
一週間後、浩輔の身体はようやく遺体で発見されたのだが、山の動物に荒らされた無残なものだった。
もちろん、対面することは叶わない。
「浩ちゃん。いい人だったのに……」
涙を拭う美百合の頭を、龍一は腕で包むようにそっと抱きしめて、髪に優しいキスをくれた。
龍一の顔を窺うように見上げると、何故か龍一は厳しい視線で、浩輔の家族の塊に目をやっている。
その目つきに不安になって、
「どうしたの?」
問うても、龍一は黙って首を振る。
こうなった龍一は、絶対に何も話してはくれない。
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