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ひとりでいろいろと考えていると、不安で気が狂いそうになる。
幸せな時間は、少しでも長い方が良いに決まっているのに、バカな美百合は自分の手で終止符を打とうとしている。
すると龍一はやっぱり、
「わかった。話すよ」
話を切り出してきた。
だが、龍一に真剣な面持ちを向けられた瞬間に、美百合はその場を逃げ出したい衝動で一杯になった。
それを耐えるために、ギュッと目を閉じて、身体の前で両手を固く握る。
龍一は、あまり感情が感じられない低い声。
「美百合、お前は本当に我がままで喜怒哀楽激しくて、そしてとんでもないじゃじゃ馬だ。だから……」
龍一は言葉を詰まらせる。
やはりそれほど言い辛いことだと、美百合の足が震える。
怖い!
でももう、止められない。
「……だから?」
美百合が促す声も、泣き出さんばかりに震えている。
「だから――」
龍一はまた、言葉を止めた。
美百合はしばらく待ったが、龍一は黙っている。
「……」
たまらず目を開け、龍一を見上げる。
龍一はそれを待つかのように、
「だからその我がままで、俺の一生を振り回し、そして困らせて欲しい」
「……それって、どういう」
「結婚しよう、美百合」
龍一はめまいがするほど美しい顔で微笑んでいた。
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