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美百合は龍一の胸にしがみついたまま、顎をあげて龍一の指先で赤く艶めいているイチゴを眺める。
「なあに? 軟果しちゃったの?」
「ああ、養液の割合も完璧なはずなんだが、何が悪かったのかな?」
イチゴの栽培は、10年のキャリアを誇るスパイ活動よりも難しいかもしれない。
「きっと龍一の美貌に見惚れて、イチゴも腰砕けになっちゃったのよ」
美百合が龍一の腕の中で、面白くもない冗談を言う。
だが浮かべる笑顔がたまらなく愛おしくて、龍一は摘まんだイチゴを美百合の唇にそっと押しあてる。
美百合が口を開いてそのイチゴを食べてしまうのを待ってから、後を追って、その唇にキスを落とした。
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