いじめ

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いじめ

 教室に入り、席に着いた。  机の上には花瓶に活けられた一輪の花。…どこまでも馬鹿にしている。  五月の連休明けくらいから、謂れのない『いじめ』という奴を受けている。  話しかけてもクラスメイトの総てが無視。先生までもが片棒を担ぎ、クラスの中に俺の居場所はなくなった。  それでも学校には来ている。こんなことで不登校になるのは、敗北宣言をしているみたいで不服だから。  毎日毎日学校に来る。  誰とも話さず、目を合わすことすらない一日を送る。  体育や移動教室の時には置き去りにされる。それでも耐えて、授業内容に従って教室を移り、体操着に着替えて校庭や体育館に向かう。  だけど誰も俺に関わらない。いない存在として扱う。  …これでも、連休前まではそこそこ人気者のつもりだったんだけどなぁ。まさか、ここまで嫌われているとは思わなかった。  どんなに思い返しても原因なんて判らない。  というか、最近のいじめは、特に理由はないけれど、なんとなくあいつを無視しようとか、そういう流れで始まることもあるらしい。  多分、俺の場合もその類だ。何が悪いとかじゃなく、『ともかくみんなであいつを仲間外れにしろ』…そういうことだろう。  判っているから、ほとぼりが冷めるのを待ちつつ学校に来ているけれど、内心はかなりきつい。  早くこんなことは終わってくれと、ただ祈るばかりだ。 * * * [ねーねー、この教室、連休中に事故死したOOくんの霊が出るってホント?」 「それ、アタシも聞いた!」 「授業中、やたらと机が揺れたりするんだって」 「放課後に、机に座る人影を見たって人もいるんだって」 「それよりも花瓶! クラス全員の気持ちで机に置いた花瓶が、いきなり床に叩き付けらるように落ちて割れたんだって!」 「何それ!」 「いやーーーー!!!!!」 * * *  相も変わらず、俺はいじめを受け入てる。  それにいちいち対応していたけれど、さすがに少し疲れてきた。  たがら最近は、さも、人が死んだことになっているかのように、机に置かれ続ける花瓶を叩き落とすことで、怒りや不満の意思表示をしている。  いつかこいつらが自身を顧みて深く反省するといい。でも、当面現状は変わりそうになくて、俺は今日も抗議の意味を込めて、机に置かれた花瓶を思いきり床にはたき落とした。 いじめ…完
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