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「…圭吾が、速水さんにも、感謝の気持ちを形にしたいといったときに、この披露宴で、両親と同じ花束を贈ろうと、最初は考えていました。
でも、二人を結び付ける切っ掛けが、勿忘草だったのなら、勿忘草メインの花束がいいなって、私が言い出したんです。
私は、穂香と友達になれたから、圭吾と出会うことができました。
穂香がいなくなってから、何となく、ぎこちない付き合いしかできなくなって、何年もの間、会うことさえなかった私達が、再会したのは、穂香のお墓でした。
今はいない穂香が、『ほら、仲直りしなさい。喧嘩したわけじゃないんだから。ほら、素直になりなさい。チャンスは今だけよ。』そう、言ってくれた気がして…。
私達ふたりは、穂香に導かれているんです、絶対に。
その穂香の花なんです。勿忘草は、穂香です。
私達は、約束をします。穂香に。そして、ここにいるみなさんに。
…絶対に、後悔しない人生を、この先送ると。
…絶対に、いただいた沢山の優しさを、忘れないと。」
俺の言葉を受け継いで、祥子は、深々と頭を下げた。顔を上げたときには、これでもかっていうくらい、素敵な笑顔だった。
「よっしゃ、俺は、それを聞き届けた。約束破ったら、俺が、許さないからな、高見沢も、祥子ちゃんも。」
「私も、忘れないからね、今日のこと。今日の約束。ちゃんと、最後まで責任持ってよ。」
修と七海が、そう言ってくれて、ピンと張り詰めたようになっていた場が、少しばかり緩んだ。
「…ありがとうございます。ちょっと、予定とは変わりましたが、お二人の決意を、しっかりと聞かせていただきました。
高見沢さん、祥子さん、どうかお二人が、末長く幸せでありますように。
まだまだ、みなさん、お話し足りないとは思いますが、お時間がまいりましたので、これで、披露宴を閉じたいと思います。
みなさん、暖かい拍手で、お二人を送り出しましょう。」
司会の座を取り戻した光輝が、なんとかその場をまとめてくれたおかげで、無事に披露宴が終われた。
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