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「おかえり、彩華。」
ベッドの中から、奏多が、声を掛けた。
「…ごめん、起こしちゃったかな。」
「いや、大丈夫だよ。一度寝たんだけど、なんだか、目が覚めちゃって。」
「本当にぃ?…実は、ずっと、起きて待ってたんじゃないの?」
「バレてたか。」
起きてきた、奏多は、肩をすくめた。
「わかります。これでも、あなたの妻ですから。」
そう彩華が言うと、奏多は、嬉しそうに彩華を抱き締めた。
「そうだよ、彩華は、俺の大事な奥さんだからね。可愛がってあげなくちゃ。」
優しいキスに、心が溶けてしまいそうになりながら、彩華は、ちょっと罪悪感。
そんな、小さな心の動揺を奏多は、ちゃんと感じ取れる。
「どうしたの、彩華?」
「ちょっとね。私って、幸福者だなぁって、思ったのよ、今。」
「今更ですか?」
「そう、今更よ。私には、奏多と一緒にいられることが、普通なことなのよね。大切な人と、同じ時間を生きることが、当たり前のように、ここにはある。
でも、世の中には、大切な人と、二度と触れられない…そんな人もいるのよね…。
私は、今の幸せを感謝しなきゃ、バチが当たるわ。」
「あのさ、高見沢さんのところで、なんかあったの?」
奏多は、いつもと少し違う彩華の物言いに、感じるものがあった。
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