圭吾と彰

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「何人かに、理由聞いてみたんだ。なんだったと思う?」 「さあ…?」 「みんな、お前のファンなんだよ。」 「はぁ?なんだそれ?」 圭吾の頭の上には、漫画なら《?》が、いくつも飛んでるだろう状態になっていた。 「千秋の本の装丁やらせてもらえるなら、光栄だって言葉の後に、必ず『だけど…』って続くんだ、自分よりもっと相応しい人がいます、実は、この人のファンなんですってな。 で、誰かって聞くと、みんな同じ名前を言うんだよな。高見沢圭吾って名前をな。」 「…本当に?」 「俺が、嘘ついてどうするんだよ。なんの得もない。」 「そう言われちゃうとな…。」 「誰も彼も、お前の装丁した千秋の本がいいって言うんだよ。その組合せ以外有り得ないってな。 固定観念は良くないって思うから、たまには、違う人に頼もうと思うんだがな。みんなこの調子だからな。 それに、千秋とは、専属契約してもらってるから、優先順位は、お前が、常に一番だからな。」 「…ありがたいかぎりだな。期待裏切らないように、頑張って仕事させてもらうよ。」 「頼むな。後で、千秋と、詰めてくれりゃあいいから。」 「そう言えば千秋さんは?」 「陽菜と彩華を引き連れて、ちびの服買いに行ってる。今日来るって、連絡先にくれてたら、買い物は、明日にしてもらったんだがな。 この後の予定はあるのか?」 「今日は、ないよ。」 「なら、夕方、早めの時間には、帰ってくるから、待っててくれるか?夕飯ぐらい、用意させてもらうから。」 「いいのか?」 「家は、来るもの拒まず、去るもの追わずで、やってるからな。それに、お前は、身内みたいなもんだよ、これだけ付き合ってきたらな。」 「…身内か。…そう言うの俺には、ないからな。ちょっと、速水が羨ましいよ。」 「なら、作れ。」 「…簡単に言ってくれるな。…出来るなら、とっくに作ってる。」 圭吾が、そう言った瞬間、いつもポーカーフェイスで表情が出ない彰の顔に、ほんの少し変化があった。
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