圭吾と彰

6/34
前へ
/226ページ
次へ
俺が、大学を卒業してすぐのGW、無事に、就職できたことを、穂香の墓に報告しに、長野へやって来た。 友永のお父さんとお母さんだって、寂しい思いをしてるんだ、せめて、俺が、新しい環境で、頑張っていることを報告して、元気付けてあげなくちゃな。そう思って、俺は、友永家へやって来た。 その時の俺は、まだ、穂香のお腹の中に子供がいたってことを、知らなかった。 穂香のお父さんは、検死の結果をみせてもらって、知っていたのだが、俺に、その事を話してくれてなかったからだ。 穂香の死で、精神的に不安定になっている俺に、話せばどうなるのか…。想像力を働かせれば簡単だ。卒業を前にして、大切な時期だからこそ、話せなかったのだ。 その日は、ご好意で、一晩泊まらせてもらうことになった。夕飯も終わり、風呂をもらい、用意してもらった寝床に、入ろうとしたときだった、穂香のお父さんが、話があるんだと、部屋にやって来た。 「…圭吾君、私は、君に、大切なことをひとつ話していないんだ。聞いてくれるかな。」 「はい、なんでしょう。」 「…実は。…穂香のお腹の中には、君の子供がいたんだよ。」 「えっ………今、何て言ったんですか?」 「…これは、検死の結果だ。」 そう言って、一通の書類を見せてくれた。そこには、【妊娠5~6週と推測】と書かれていた。 「…あの時の君に、どうしても言えなかったんだ。これ以上、君を悲しませたくなくて。 黙っていることも、優しさかもしれないが、君が、一生知らないのは、やっぱりおかしい、そう思うようになってね。」 俺は、何も言えなかった…。 ただ、ポタポタと涙が落ちていくのを、止めることが出来なかった。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加