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お父さんを責めることなんて出来なかった。あの時の俺は、穂香の両親のおかげで、なんとか理性を保てていたのだから…。
もし、あの時に聞いていたら…。
事故を起こした運転手に、復讐しようとしたかもしれない…。
精神的なダメージが、大きすぎて、失語症どころの騒ぎでは、なかったかもしれない…。
一番最悪は、穂香の後を追って、命を断っていたかもしれない…。
そうなるんじゃないかと、お父さんを心配させるほど、俺は、救いようがない状態だったんだ。
今でよかった…。悲しさは、変わらないけれど、寂しさは、変わらないけれど。まだ、ちゃんと、自分の力で、理性を保てるから。
「教えてくれて…ありがとうございました。」
その夜、穂香と二人で、ベビー服を買いに行く夢を見た。
朝、目が覚めると枕が濡れていた…。
東京に帰ってからの俺は、必死に仕事をした。
研修も終わって、企画部門に配属された。念願の商品デザインの仕事を先輩について、やることになった。小さな仕事だけど、遣り甲斐があった。
実力を磨きたくて、コンペに幾つも参加した。それなりの評価をしてもらえたみたいで、賞ももらえた。
今は、自分の出来ることをひとつまたひとつこなしていくしかなかった。
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