淡い想いを抱いて…

4/16
前へ
/226ページ
次へ
「そんな顔するなよ、彩華。」 「だって…。」 まるで、小さな子供にするように、頭を撫でながら、彩華の顔を覗き込んできた。 「ある時な、はたと気付いたんだ。なんで、俺が、結婚するっていう未来を描けないのかを。たぶん、あれが、原因だってことを見付けたんだ。」 「じゃあ、それを、取り除けば、叔父様、結婚出来るんじゃないんですか。」 圭吾は、寂しそうな笑いをして言った。 「ありがとう、彩華ちゃん。だけど、無理だと思う。…俺は、きっと、どんなに望んでも、この先、結婚は、出来ないと思うよ。」 「どうして?」 「原因を、取り除けないんだ。…俺から彼女の記憶を消すことが出来ないから、永遠に、彼女とは、結ばれないから。」 それは、圭吾が、彩華に初めて見せた表情だった。そんな表情で話す圭吾を、彩華は、一度も見たことがなかった。 彩華を見ている瞳は、潤んでいて、とても哀しそうだった。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加