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「そんな顔するなよ、彩華。」
「だって…。」
まるで、小さな子供にするように、頭を撫でながら、彩華の顔を覗き込んできた。
「ある時な、はたと気付いたんだ。なんで、俺が、結婚するっていう未来を描けないのかを。たぶん、あれが、原因だってことを見付けたんだ。」
「じゃあ、それを、取り除けば、叔父様、結婚出来るんじゃないんですか。」
圭吾は、寂しそうな笑いをして言った。
「ありがとう、彩華ちゃん。だけど、無理だと思う。…俺は、きっと、どんなに望んでも、この先、結婚は、出来ないと思うよ。」
「どうして?」
「原因を、取り除けないんだ。…俺から彼女の記憶を消すことが出来ないから、永遠に、彼女とは、結ばれないから。」
それは、圭吾が、彩華に初めて見せた表情だった。そんな表情で話す圭吾を、彩華は、一度も見たことがなかった。
彩華を見ている瞳は、潤んでいて、とても哀しそうだった。
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