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「先輩、何で、彼女いないんすか?
わかった!俺みたいな、甲斐性がないんだ。だから女の子も、寄ってこないんでしょ。」
「…彼女いないと、だめなのか?」
「そりゃそうでしょ。そして、男は、好きな女を守れて、一人前っすよ。
で、先輩は、好きな子いないんすか?
それとも、甲斐性なしで、フラれたとか?」
バン!
持っていたグラスを、テーブルに、叩きつける勢いで置くと、叫んでいた。
「ああ、確かに、俺は、好きな女を守れなかったさ!
あの時、何で、一緒にいなかったんだろうって、後悔したさ!
だけど、誰が、わかるんだよ…。
好きな女が、この世から、いきなり居なくなるなんて…。
お前に何がわかる!俺の心の何がわかるんだよ!」
普段、怒鳴ったりしない俺が、これでもかって大声で、叫んだもんだから、みんな固まってた。
「…帰る。」
みんなをその場に残して、俺は、店を出た。
部屋に帰った俺は、家にある、ありったけの酒を浴びるように飲んだ。
次の日、俺は、社会人になって、初めて仕事をサボった。
昼過ぎ、お腹が減って来たから、買い物に、ぷらっと出掛けた。
俺は、何やってんだろうか…。
昼下がりの公園。誰もいない。
ベンチを見付けて座ると、コンビニで買ったサンドウィッチを袋から出して、食べた。
ぼおっと、缶コーヒー片手に、座っていた。
「はぁ…俺、大人げないよな…。」
俺は、幸せそうな後輩が羨ましかった。
幸せな顔をしてる後輩が妬ましかった。
どうして、俺には、あの幸せがないのかと、考えると、悲しくなったのと同時に、腕の中にいた穂香の感覚を、もう忘れかけていることに気付く…。
不意に、涙が溢れてくる…。
思い出さないようにしていたのにな…。
穂香に会いたい…。
会うためには、あの世へ行くしか手はないんだよな…。
いけないと思いながらも、後ろ向きな思いが、頭をもたげてくる。
その後、俺は、近くの踏み切りの前で、かなり長い間、立っていた。
何度も、電車に飛び込もうとしては、その度に、思い止まったらしくて、俺は、今もまだ、生きている。
その後、何で、そこへ足が向いたのかわからないが、花屋の前にいた。
俺の目の前には、薄い青の勿忘草が、そよ風に揺れていた。
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