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彼に付いて行った先は、俺から見たら、かなりお金の掛かった立派な一軒家。
【佐伯潤】表札には、そう書いてあった。どこかで、聞いたことある名前だよな…。
インターホンを鳴らすと、綺麗な女性の声が聞こえた。
「速水ですけど。」
すぐに、玄関のドアが開いた。
「悪いわね、速水君。」
「いえ、佐伯先生のお願いなら、仕方ありませんよ。俺がダメなら、代わりが、使い走りするだけのことですし。」
「本当に、言い出したら、即だから…。あら、こちらは?」
「気になさらないでください。ちょっとした知り合いなんです。これから、仕事終わりで、街に繰り出そうかと。」
「あら、お約束があったのね。ご免なさい、遠回りになってしまったんじゃないの?」
「大丈夫です。じゃあ、これ、置いていきますね。」
「本当に、ありがとう。」
「明後日、谷口が、原稿いただきに参りますから、よろしくお願いしときます。」
「しっかり、お尻叩いて、書かせとくわ。」
「それじゃあ、失礼します。」
速水と呼ばれた彼は、深々と頭を下げると、その家を後にした。
「ふう…今日の仕事は、おしまいっと。
えっと…名前なんだっけ?ああ、聞いてなかったな。ごめん。
俺は、速水彰。速水でも、彰でも、好きなように呼んで。…君は?」
「高見沢圭吾。」
「じゃあ、改めて。高見沢、良い店知ってるから、飲みに行こう。」
速水は、爽やかな笑顔で、俺に言ったんだ。花屋で彼に了承の意を表していたんだから、俺は、断る理由がなかった。
15分ほど後、二人は、とある居酒屋の暖簾を潜っていたんだ。
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