淡い想いを抱いて…

5/16
前へ
/226ページ
次へ
それは、圭吾が、まだ大学に入ったばかりの頃の話だ。 「おーい、高見沢。」 同じ講義を取っていた千葉修が、圭吾を呼び止めた。 「なにか用?」 「あのさ、お前、明日の夜、体空いてる?」 「夜か…バイト入ってんだけど…。」 「休めねぇ?」 「なんで?」 「実は、合コンやるからって、先輩に誘われたんだ。だけど、男が、足んないみだいでさ、何人か連れてこいって言われたんだよ。」 「合コンねぇ…行きたいのは山々なんだけど…。」 「やっぱり、バイト休めねぇか…。悪い、いきなりだったし、聞かなかったことにしてよ。」 この時、次の機会にって、断っていたら、その先の展開はなかったし、俺の人生は、変わっていたと思う…。 「千葉、ちょっと待って。明日なんだよね、合コンは。」 「そうだよ。」 「今日、バイト行ったら、休めるか、聞いてみるよ。だから、返事は、明日の朝まで待ってくれる?」 「無理言ってんだし、それくらい、いいよ。他にも、何人か声を掛ける予定だけど、お前の分は、とりあえず空けとくよ。じゃあ、頼むな。」 修は、何度か振り返って、手を振りながら、校舎の向こうに消えていった。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加